あなたは介護タクシーの開業を考えているけれど、なにから手を付けていいか分からないと悩んでいませんか?
介護タクシーの開業は施設の確保や行政手続きなど、様々なステップを踏む必要があるので、開業の方法が分からず悩む方が多いです。
介護タクシーに限らず事業を始める際は、不要な出費を避けるためにも、開業のための全体像を把握しておくことが大切です。
この記事では専門の行政書士が、介護タクシー開業の流れや方法について解説しています。
この記事を最後まで読むことで、開業にあたってやるべき事がはっきりするだけでなく、全体像や抑えるポイントを知ることができます。
介護タクシーとは
介護タクシーとは、高齢者や障害者など、移動が困難な人々が利用するためのタクシーサービスのことです。
介護タクシーというのは実は通称名であり、正確には介護タクシー(福祉タクシー)と介護保険タクシーの2つがあります。
介護タクシー(福祉タクシー)は、開業のハードルが比較的低く、利用の制限があまりない代わりに、介護保険の適用を受けることができないという特徴があります。
介護保険タクシーは、開業のハードルが高く利用の目的や利用者に制限があり、介助料金に介護保険が適用できるという特徴があります。
下記に介護タクシー(福祉タクシー)と介護保険タクシーの違いをまとめておきます。
比較項目 | 介護タクシー(福祉タクシー) | 介護保険タクシー |
---|---|---|
開業方法 | 個人事業主として開業可能 | 法人の設立が必須 |
許可の種類 | ・一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定) | ・訪問介護事業または居宅介護事業の指定 ・一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定) |
運転者に必要な資格 | ・第二種普通自動車免許 | ・第二種普通自動車免許 ・介護職員初任者研修 |
介護保険の適用 | 不可 | 乗降介助のみ適用可 |
利用者 | 要支援者、要介護者、障害のある方など | 要介護1以上の認定を受けている方 |
利用者以外の乗車 | 可能 | 原則として不可 |
移動先・利用目的 | 制限なし | 通院等に限られる |
この記事では、比較的開業し易い介護タクシー(福祉タクシー)の開業について解説していきます。
そして、介護タクシーを開業するにあたってすべきことは、大きく分けると次の3段階に分けられます。
- 許可申請までにすべきこと
- 許可申請中にすべきこと
- 許可取得後にすべきこと
それぞれのタイトルに分けて、解説していきます。
許可申請までにすべきこと
許可申請までにすべきことは、大きく分けて4つあります。
普通二種免許の取得
介護タクシーの開業を決意したら、まずは自動車学校に申し込んで、普通二種免許の取得を目指します。
二種免許取得の費用について、自動車学校にもよりますが大体25万円~30万円程度を見ておくとよいでしょう。
また自動車学校は日曜・祝日が休みであることが多いので、週1で通うとすると4ヶ月~5ヶ月程度かかる場合もあります。
資金の調達
介護タクシーに限らず、事業を立ち上げる際は開業のための資金およびその後の運転資金が必要となります。
介護タクシーは、飲食店や一般的な運送業と比べて、初期投資はかなり抑えられるとはいえ、ある程度の資金は必要となります。
目安としては「150万円+車両代」と考えていただければよいですが、事業が軌道に乗るまでの運転資金のことも考えると、多ければ多いほど安心です。
自己資金だけでは心もとないという方は、まずは銀行や国金(日本政策金融公庫)などの金融機関に相談に行かれることをお勧めします。
業務施設の確保
介護タクシーを開業するためには、準備しなければならない施設がいくつかあります。
それぞれの施設について、契約のタイミングも含めて解説します。
施設① 営業所・休憩施設
運転手の点呼や日報や資料を保管するするための営業所と、運転手が休憩するための休憩施設が必要となります。
これらの施設は、必ずどこか借りなければならないわけではなく、自宅の一室でも問題ありません。
また、営業所と休憩施設はパーティションで分ければ同じ部屋であっても大丈夫です。
営業所・休憩施設を新たに借りる場合は、許可申請までに賃貸借契約を済ませておく必要があります。
施設② 車庫
営業所・休憩説と同様、介護タクシーの開業には車両を駐車する車庫が必要です。
車庫という言い方をしますが、屋根のない青空駐車場でも問題ありません。
広さについて、車両の前後余分に1m確保できれば、自宅の車庫でもOKです。
なお、車庫を新たに借りる場合は、許可申請までに賃貸借契約を済ませておく必要があります。
また注意点として、営業所から車庫までの距離は、直線距離で2kmまでと決まっています。
業務を行う上でも営業所と車庫の距離は近い方が効率よく営業活動ができますので、あまり離れすぎないようにしましょう。
さらに車庫の目の前の道路が狭い場合、車庫として認めららない場合がありますので、道幅の広さにも注意して候補地を探すようにしましょう。
施設③ 車両
利用者様を目的地まで運ぶための車両も、もちろん必要となります。
介護タクシーの車両というと、車いすを載せるためのストレッチャー付きのバンをイメージされるかもしれませんが、実は法律上セダンや軽自動車であっても介護タクシーの車両として認められています。
車両については、許可申請までに手元にある必要はなく、最低限購入を前提とした見積もりと車検証があれば申請が可能です。
むしろ開業にあたって新たに車両を用意する場合は、許可が下りた後に売買契約やリース契約を結ぶパターンが一般的です。
また注意点として、車いすを固定するための設備がついている車両(福祉車両)以外を使用する場合、運転手や同乗者が下記の資格を持っている必要があります。
- ケア輸送サービス従事者研修
- 介護福祉士
- 訪問介護員(ホームヘルパー)
- 居宅介護従業者
運輸局への申請
介護タクシーを開業するためには、国に申請をして許可を得る必要があります。
事業の計画や運行管理体制を記載した申請書に、申請者や施設の状況が分かる書類を添付します。
控えも合わせると、申請書は厚さ数センチともなる大容量です。
申請先は営業所が存在する都道府県を管轄する運輸支局となります。
運輸支局は基本的に都道府県に1つあるため、営業所が愛知県にあれば愛知運輸支局に申請するという事になります。
許可申請期間中にすべきこと
大きく分けて4つあります。
適性診断の受講
適性診断とは、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が行っている運送事業者の運転手向けの診断です。
主に運転手の性格や運転の癖を診断し、運転技術における得意不得意を評価します。
運送事業者の運転手は、法律でこの診断が義務付けられているため、必ず受講する必要があります。
アルコール検知器の購入
介護タクシーを開業した場合、「運送事業者」という括りになります。
「運送事業者」は原則としてアルコール検知器の導入が義務付けられています。
アルコール検知器は、運転手の乗車前に使用し、体内のアルコール数値に問題がないかをチェックする機械です。
なお、どのような検知器を購入すればいいかという質問をたまに受けますが、結論どのような物でも大丈夫です。
Amazon等で評価が高く安価なものを購入しておけば間違いありません。
ただ一つ注意点があり、数千円のアルコール検知器は、検知部分の劣化スピードが速い傾向にあるため、1年に1度程度買い替えることをお勧めします。
法令試験の対策
介護タクシーの許可を得るためには、国土交通省が実施する法令試験に合格する必要があります。
法令試験の対策については、過去問題を中心に解いて対策することにはなるんですが、残念ながら中部地方は過去問題を公表していません。
地域は異なりますが、近畿運輸局のホームページにて過去問題と解答を公表しているので、こちらを参考にしていただければ幸いです。
なお、中部地方に関しては、紙の書籍や自分でまとめたノート等を試験に持ち込むことができます。
当日分からない問題が出てきたら、持ち込んだ資料で確認することもできるので、必要以上に恐れることはないかと思います。
講習の受講
介護タクシーの許可後に、民間救急の認定やぶら下がり許可を受けたい場合のみ、講習の受講が必要となります。
民間救急の認定を受けたい場合は「患者等搬送乗務員基礎講習」、ぶら下がり許可を受けたい場合は「福祉有償運送運転者講習」の受講が必要となります。
ただし、これはあくまでこれらの認定や許可を受けたい場合のみとなりますので、全ての事業者様に当てはまる訳ではありません。
許可取得後に行う事
こちらは大きく分けて5つあります。
許可証の交付
介護タクシーの許可下りると、申請書を提出した管轄の運輸支局から連絡が入りますので、許可証を受け取りに行きます。
受け取りの際に、地域にもよりますが1時間弱程度、今後の手続きや運営上の注意点等の説明があります。
運賃・約款の認可申請
中部運輸局管内の愛知県、静岡県、岐阜県、三重県、福井県に介護タクシーの営業所を置く場合は、許可取得後に「運賃・約款の認可申請」という申請が必要となります。
他の地域では、この申請は初めの許可申請と同時に出来る場合もあるようですが、中部地方については同時に申請することができません。
そのため、介護タクシーを開業するためには「許可申請」と「運賃・約款の認可申請」の2つの申請が必要となります。
この「運賃・約款の認可申請」が認可となるまでには約2~3ヶ月程度かかります。
車両の登録(ナンバープレートの変更)
運賃・約款の認可申請が認可となると、事業用自動車等連絡書(以下、「連絡書」といいます。)という書類を発行することができるようになります。
この連絡書は地域によって、許可証受け取りの際に発行してもらえる場合もあれば、自分で作成し運輸支局に印鑑を押してもらう事で書類が完成する場合もあります。
いずれにしろ、この連絡書を車両を購入したディーラーに渡すことで、福祉車両を事業用として登録することができます。
なお、車両は既に手元にある場合は、この連絡書を使って現在の白いナンバープレートを事業用に緑のナンバープレートに変える必要があります。
自動車任意保険の加入(切り替え)
手元に事業用ナンバーに変更した車両が届いたら、自動車保険の会社に車検証のコピーを送って、自動車任意保険に加入します。
介護タクシーの営業は、この任意保険が適用されてからでないと行うことができないため、開業を急いでいる方は早めに行うと良いです。
なお、元々車両が手元にあって、既に任意保険に入っている方も、その保険を事業用に切り替える必要があるので、同じ手順で保険の切り替えを行います。
運輸開始届の提出
任意保険の加入が済んで、介護タクシーの営業を開始したら、30日以内に管轄の運輸支局に「運輸開始届」を提出する必要があります。
この運輸開始届には、「変更後の車検証や任意保険証券の写し」や「施設の写真」、「社会保険等の保険に加入した事が分かる書類」等を添付する必要があります。
この書類が受理されれば、これで一連の介護タクシーの許可申請の手続きは終了です。
まとめ
今回は介護タクシーの開業について、網羅的に解説いたしました。
介護タクシーは少子高齢化や障がい者の増加に伴い、今後一層の需要が見込める事業です。
さらに一般の運送業や飲食業のように、最初に数千万円単位の初期投資も不要であり、スモールスタートが可能というまさに時流に即したビジネスモデルと言えます。
「もっと具体的に手続きについて相談したい」「介護タクシーの開業を考えている」という方は、筆者が運営する「愛知の運送業許可ステーション」からお気軽にご相談ください。
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