一般貨物運送業の許可を取得するためには、法令試験に合格する必要があります。
試験と聞いて、苦手意識があり漠然と不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
実は運送業許可を申請するほとんどの方が、法令試験に関して不安を持たれています。
確かに法令試験についての知識や、対策方法を知らなければ不合格になってしまう事もあります。
そこで今回は運送業許可専門の行政書士が、法令試験に合格するための知識を全てお伝えします。
この記事を最後まで読むことで、必要以上に恐れることなく法令試験に臨むことができます。
法令試験の概要
最初に一般貨物運送業の法令試験についての概要を解説します。
いつ受験するか
法令試験の受験時期は、許可の申請を行う時期によって決まります。
運送業の営業所が愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県にある場合の中部運輸局管轄の場合は“申請した月の翌奇数月”に法令試験があります。
つまり、許可の申請を行った月が1月であれば法令試験は3月に開催され、2月申請の場合も3月に試験、3月申請の場合は5月に試験があるという考え方です。
どこで受験するか
次に法令試験がどこで開催されるかという点ですが、“営業所がある都道府県の運輸支局の会議室”である場合が多いです。
中部運輸局管轄であれば、愛知県以外についてはこの考え方で大丈夫です。
愛知県だけは、愛知運輸支局ではなく中部運輸局内の会議室で行われます。
誰が受験するか
最後に実際に誰が受験をするかという事ですが、ズバリ“会社の常勤役員”です。
常勤というのは、基本手に会社で決められている休日以外は、毎日その会社の業務を行う方の事を言います。
しかし、法律で明確に定義されているわけではないので、最終的にはその会社が“常勤”と定めれればその従業員は“常勤”という事になります。
なお、もともと役員が代表取締役1人という場合は、必然的に法令試験を受けるのはその代表取締役となります。
どのような試験か
法令試験の問題は、ほとんど〇×形式で後半に少し選択式の問題があります。
制限時間は50分で、8割以上正解で合格となります。
出題の範囲としては、次の13種類の法律となります。
- ①貨物自動車運送事業法
- ②貨物自動車運送事業法施行規則
- ③貨物自動車運送事業輸送安全規則
- ④貨物自動車運送事業報告規則
- ⑤自動車事故報告規則
- ⑥道路運送法
- ⑦道路運送車両法
- ⑧道路交通法
- ⑨労働基準法
- ⑩自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年2月9日労働省告示第7号)
- ⑪労働安全衛生法
- ⑫私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
- ⑬下請代金支払遅延等防止法
法令試験の合格率
中部運輸局管轄において、令和6年8月時点の直近1年間の受験者数は159人です。
そのうち無事合格されたのは143人で、合格率にすると約90%です。
意外に思われるかもしれませんが、法令試験の合格率は非常に高く10人に9人は合格することができます。
さらに法令試験は1回不合格でも、もう一度受験することができます。
なので実質的な不合格である2回連続で落ちてしまう確率は(1-0.9)²x100=1%
合格率だけ見ると、99%の確率で法令試験に合格し運送業の許可を取得することができます。
法令試験の過去問
法令試験の対策方法と言えば、やはり過去問題を解いて問題の傾向や流れを掴むことです。
それでは、肝心の過去問題はどこで入手すればいいのでしょうか。
実は中部運輸局のホームページにて公開されています。
こちらで直近の過去問題や、先ほど紹介した受験者数や合格者数を確認することができます。
さらに過去問題だけはなく、きちんと答えも載っているので印刷して実際に解くことで試験対策をすることができます。
法令試験を過度に恐れる必要がない理由
法令試験は運送業の許可を取得するために重要な要素です。
しかし、先ほどの合格率からもわかる様に過度に恐れる必要はありません。
ここからは法令試験を過度に恐れる必要が無い理由を解説します。
条文集が配布される
試験本番では、条文集といういわば参考資料のようなものが配布されます。
問題分を読んでみて、答えが分からなかった場合は、この条文集から答えとなる条文を探して回答するという訳です。
たしかに条文を探すのに多少時間はかかりますが、ご丁寧に問題分の横に根拠となる法律の名称が載っていて、条文集にも目次があります。
そのため落ち着いてゆっくり探せば確実に答えにたどり着くことができます。
そしてその条文集についても中部運輸局のホームページに載っています。
どうしても心配な方は、こちらの条文集と問題を全て印刷し、本番を想定して一度解いてみると良いでしょう。
同じ問題が繰り返し出題される
過去問題をといていると、昨月と同じような問題が繰り返し出題されていることに気がつくと思います。
例えば、次のような問題です。
問題11(定義)
「貨物自動車運送事業」とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業
をいう。(貨物自動車運送事業法)
令和5年9月法令試験問題より抜粋問題1(定義)
「貨物自動車運送事業」とは一般区域貨物自動車運送事業、一般路線貨物自動車運
送事業、特定貨物自動車運送事業をいう。(貨物自動車運送事業法)
令和6年3月分法令試験問題より抜粋問題1(定義)
「貨物自動車運送事業」とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業
及び特別積合せ貨物運送事業をいう。(貨物自動車運送事業法)
令和6年5月分法令試験問題より抜粋
このように法令試験の問題は、重要な問題が毎月繰り返し出題される傾向があるのです。
このような頻出問題については、条文を見なくても答えらえるようにしておくことで、条文集から答えを見つける時間を短縮でき、合格に近づくことができます。
サービス問題が出題される
法令試験の問題の中には、常識的考えればわかるようなサービス問題も出題されます。
例えば、次のような問題です。
問題3(輸送の安全)
一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の最大積載量を超える積載をすることとなる運送の引受け、過積載を前提とする運行計画の作成及び事業用自動車の運転者に対する過積載による運送を指示することができる。(貨物自動車運送事業法)
令和6年5月法令試験問題より抜粋
運送会社は、過積載を行ってもよいといった趣旨の問題です。
この問題に対して〇×を付けるのですが、これは当然×ですよね。
このような問題は条文を引く必要もないため、さらに法令試験の難易度を下げています。
まとめ
いかがだったでしょうか、今回は運送業の許可を取得するために必要な法令試験について解説しました。
この記事の筆者は運送業専門の行政書士事務所を運営しており、運送業許可のご依頼をいただいたお客様には、実際に本番で使用される条文集と問題用紙を再現したテキストを無料でお渡ししています。
「もっと具体的に法令試験について相談したい」「運送業許可の手続きを丸投げしたい」という方は、筆者が運営しているホームページ「愛知の運送業許可ステーション」からお気軽にご相談ください。
運送業専門の行政書士が誠心誠意対応いたします。