ご存じの通り、運送業を行う場合は許可を取得する必要があり、許可を得ずに営業を行った場合は違法となります。
しかし、運送業といっても様々な業態があり、そのすべてで許可を得る必要があるのでしょうか。
今回は運送業の許可が不要となる場合を、よくある事例を交えて運送業許可専門の行政書士が解説します!
運送業許可とは
はじめに許可が必要となる「運送業」とは、何を指すか見てみましょう。
「運送業」は「貨物自動車運送事業法」という法律で、次の3つに分けられています。
- 一般貨物自動車運送事業
- 特定貨物自動車運送事業
- 貨物軽自動車運送事業
そして、最もポピュラーな「一般貨物自動車運送事業」についての概要は次の通りです。
一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものを言う。
貨物自動車運送事業法第2条第1項より引用
「他人の需要に応じ」とはつまり、「荷主から依頼を受けて」という事です。
「有償で」とは、そのまま「運賃をもらって」という事です。
「自動車」は1ナンバーか4ナンバーの「トラックやバン」のことを言い、軽自動車やバイクを除きます。
要約すると、「荷主から運送の依頼を受け、運賃をもらって、トラックで荷物を運送」すれば一般貨物自動車運送業になります。
なお、「特定貨物自動車運送事業」とは、荷主が一つに限られているバージョンの「一般貨物自動車運送業」といった解釈で良いかと思います。
とある新聞会社から委託を受けて、その新聞専属の運送を行っている会社などが例に挙げられます。
「貨物軽自動車運送事業」とは、これも軽自動車を使用するバージョンの「一般貨物自動車運送業」というイメージです。
本記事では「一般貨物自動車運送事業」に関して、許可が不要なパターンについて解説していきます。
自社の製品を運ぶ場合
例えば、自社で販売した雑貨をサービスの一環として無償で購入者に配送する場合、もちろん運送業の許可は不要です。
運送業に該当するには、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使って荷物を運ぶことです。
この場合は「有償」ではないので、運送業に該当しないという理屈です。
問題は運賃を貰って、自社製品を配送する場合です。
つまり、自社で販売した商品を配送料を貰って、自社トラックで配送する場合、許可がいるのでしょうか。
この場合は、一見許可が必要となりそうですが、ケースバイケースで不要になる場合もあります。
過去に「リサイクルショップの運営にて、客が購入した大型家電製品を自社トラックにて自宅へ納品する際に、配送料を貰う事に関して運送業の許可が必要であるか」問い合わせたことがあります。
回答は、大型家電製品の販売とその配送という2つの業務については、密接な関係であり不可分であるから、配送がその業務に付帯して行われている以上、当該配送行為が主要業務である家電製品販売業務の過程に含まれているものと認められ、運送業の許可は必要ないという趣旨のものでした。
国土交通省の見解は、配送する行為自体が、商品の販売業務に含まれているかどうかを重視しているようです。
つまり、本来の業務である商品の販売にあたって、配送も当然に含まれるものであり、販売と配送が切り離せないような業態である場合は運送業の許可は不要という認識ということですね。
いずれにしろこのようなケースは、業務内容を明確にして、国土交通省等の許可を出している機関に問い合わせたほうが良さそうです。
運賃が発生しない場合
運賃(配送料)を貰わずに、運送行為をする場合も運送業の許可は不要です。
先ほどの、商品を無償で配送する場合もこれに該当します。
あとよくあるのが、建設会社のダンプ等で建築材料を現場まで運ぶ場合ですね。
建材を運んだことによって、報酬を得ていなければ許可は必要ありません。
ただし、このパターンで一点注意する点があります。
それは運んだことによる報酬を「運賃」という名目で貰っていない場合で「有償」とみなされる場合があるという事です。
どういう事かと言うと、建材を運んだことによって「日当」や「人工代」として請求していたり、割引等によって運賃相応の対価を貰っている場合は、運賃が発生していると同視される場合があります。
なので、重要視すべき点は運送行為によって「運賃」を貰っているかどうかではなく、何らかの形で「対価」が発生しているかどうかという点になります。
軽自動車やバイクを使用する場合
軽トラを含む軽自動車や125㏄を超えるバイクで運送行為を行う場合、一般貨物運送業の許可は不要になります。
その代わりに、冒頭で登場した「貨物軽自動車運送事業」の届出が必要となります。
また、余談ですが一般貨物運送業の許可を得るためには、5台以上の貨物自動車を用意する必要があり、この貨物自動車に「軽自動車」は含められないので注意しましょう。
なお、125㏄以下のバイクを使用する場合については、こちらの届出も不要になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は運送業の許可が不要な場合について、よくあるパターンを例に解説しました。
「自分の場合は許可が必要になるのかわからない」「運送業の許可について相談してみたい」という方は是非お気軽にご相談ください。
専門の行政書士が丁寧に対応いたします。
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