運送業の営業所新設を行う方法について専門家が5分で解説!

一般貨物自動車運送事業の営業所を新たに新設する場合、様々な条件を揃えた後、管轄の運輸支局に対して申請を行い認可を得る必要があります。

ここで言う様々な条件とは、「運行管理者が1人以上確保されているか」や「車両が5台以上確保できるか」といった、営業所を設けるための要件です。

このような要件を揃えない事には、いくら運輸局に申請をしたとしても認可となることはありません。

今回は、運送業の営業所を新たに新設しようと思った際に、具体的にどの順番で進めていけばよいか、どのような点に気を付ければよいかを解説します。

営業所新設の要件

先ほど言った通り、まずは要件をクリアしていなければそもそも申請ができません。

その要件は、主に次の7つです。

  • 適切な営業所が確保できる
  • 適切な休憩施設が確保できる
  • 適切な車庫が確保できる
  • 貨物車両が5台以上確保できる
  • 運行管理者が1人以上確保できる
  • 整備管理者が1人以上確保できる
  • 車両の運転手が5名以上確保できる

まずは、これらの要件をクリアできそうか確認するところから始めましょう。

適切な営業所が確保できる

営業所を新設するわけですから、営業所となる建物を確保するのは当然として、その建物が適法な状態でなければなりません。

適法な状態として主に問題となるのが、その建物が建てられている地域の用途地域です。

用途地域は主に「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けられ、原則として「市街化調整区域」に運送業を設けることはできません。

さらに「市街化区域」はさらに13種類の用途地域に細分化され、またしても営業所を設けられる地域と設けられない地域があります。

第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域

建築基準法別表第二より抜粋

そのため、「建物を契約したら営業所使用できない用途地域だった」という事にならないよう、事前に管轄の市区町村役場などで確認する必要があります。

適切な休憩施設が確保できる

運送業の営業所を新設する際に、合わせて必要となるのが運転手等が休む休憩施設です。

休憩施設は、原則として営業所か車庫に併設させる必要がありますが、殆どの場合は営業所に併設させることになるかと思います。

休憩施設についても先程解説した用途地域による制限を受けますので、営業所の調査と一緒に休憩施設の調査も行っておくのが良いでしょう。

また、休憩施設に関して具体的な広さの制限はありませんので、常識的に人が休憩できるスペースが確保されていれば問題ありません。

適切な車庫が確保できる

営業所を新設する場合は、その営業所に所属する車両を確保する必要がありますので、当然その車両を停める車庫についても必要となります。

ここでも適切な車庫という表現をしていますが、車庫については建物を建てない限り用途地域による制限を受けることはあまり考えられません。

その代わりと言っては何ですが、車庫については目の前の道路の道幅が問題となるケースが多いです。

片側一車線の合計2車線あるような道であればまず大丈夫ですが、相互通行にもかかわらず1車線しかないような道につながっている車庫の場合は注意が必要です。

こちらもその道路を管理している市区町村役場に「車両制限令による証明願」を申請し、その道幅が停めようとしている車両に適合しているか調査する必要があります。

また、車庫について営業所と併設している場合は問題にはなりませんが、営業所から離れている場合は車庫までの距離は一定の距離を保たなければなりません。

一定の距離については、地域によって5km~20kmの範囲で異なりますが、中部地方においては直線で10kmと定められています。

貨物車両が5台以上確保できる

先程も少し触れましたが、運送業の営業所を新設する際はその営業所に所属する事業用自動車を5台確保する必要があります。

これは新しく5台増やさなければならないというわけではなく、既存の営業所から移動させることもできます。

ただし、既存の営業所において事業用自動車を5台未満にすることはできないため、車両の数によっては新たに購入などして揃えなければならないこともあります。

揃える車両については、車検証上の用途が「貨物」であり、軽自動車でなければどのような車両でも大丈夫です。

また、購入して自社所有にする必要はなく、リース車両でも問題ありません。

運行管理者が1人以上確保できる

運送業の営業所には、最低1人以上の運行管理者をおく必要があります。
運行管理者は、毎年3月と8月に開催される運行管理者試験に合格することでなることができます。

また、車両が30台以上となる場合は2人、60台以上なら3人と確保する人数が増えていきますので、車両が多い場合は運行管理者の確保にも気を配る必要があります。

車両と同じで、既存の営業所にて規定数以上の運行管理者がいる場合、新設する営業所に移動させることができます。

整備管理者が1人以上確保できる

運送業の営業所には、基本的に最低1人以上の整備管理者をおく必要があります。

ただし、新設する営業所が既存の営業所と同じ都道府県内にある場合、2つの営業所間で整備管理者が兼任できる場合もあります。

この兼任の規定については、都道府県によって取り扱いが異なる部分であるため、あらかじめ各都道府県を管轄する運輸支局の保安課に問い合わせることをお勧めします。

整備管理者は、3級以上の自動車整備士資格を持っている、もしくは2年以上の整備等の経験があり、かつ整備管理者選任前研修を受講することでなることができます。

車両の運転手が5名以上確保できる

運送業の営業所には、5台以上の事業用自動車確保する必要があると説明しましたが、その自動車を運転する運転手についても5人確保する必要があります。

ただし申請時点では確保予定とし、営業開始までに確保するという方法をとることもできます。
もちろん既存の営業所から、新設する営業所へ移動させることも可能です。

運送業の営業所新設を行う手順

営業所新設の要件を確認したところで、いよいよ新設に向けて動き出すわけですが、ここでもそれぞれの工程の手順が大切になってきます。

まずは、全体の手順は下記の流れで進んでいきます。

  1. 営業所、車庫の候補地を探す
  2. 営業所、車庫の物件を契約する
  3. 必要となる書類を揃える
  4. 運輸局に対して申請をする
  5. 営業できる準備を整える
  6. 認可取得

それぞれ具体的に解説しますので、一緒に確認していきましょう。

営業所、車庫の候補地を探す

まず最初に新設したい営業所とそれに付属する車庫の候補地を探します。
ここでポイントはまず車庫を探して、車庫が見つかったらその近くで営業所を探すのが良いです。

何故かというと、車庫の方が圧倒的に見つけにくいからです。
最初に営業所を決めてしまうと、車庫の範囲はその営業所から10km(中部地方)に限られてしまいます。

そのため最初にまず車庫を決めてから、次に営業所を探すと見つけやすいと言えます。
先ほど解説した要件に気を付けながら、不動産屋に通い根気強く探していきます。

良いと思う候補地が見つかったら、車庫の場合は前面道路の道幅等、営業所の場合は用途地域等を確認し、法律に適合しているかを調査します。

この調査に関しては、自身で行うよりも行政書士などの専門家に頼んだ方が確実です。

営業所、車庫の物件を契約する

納得のいく候補地が見つかったら、その物件の契約します。
購入する場合は売買契約、賃貸の場合であれば賃貸借契約を行います。

まだ認可も下りていないのに契約は早いのではないか?」と思われるかもしれませんが、契約のタイミングはココで合っています。

何故かというと、営業所や車庫に関する契約が済んでいないと運輸局に対してそもそも申請ができないからです。
申請できなければ認可ももちろん下りないので、契約のタイミングはココしかありません。

必要となる書類を揃える

物件の契約が完了したら、今度は運輸局に対する申請の準備に取り掛かります。
具体的には、必要となる書類をこの段階で揃えておきます。

下記に営業所新設の申請に必要となる書類を紹介します。

  • 営業所、車庫の位置図
  • 営業所、車庫の平面図(求積図)
  • 営業所、車庫の写真
  • 車両制限令による証明願(またはは幅員証明書)
  • 建物の賃貸借契約書写し(購入の場合は登記事項証明書原本)
  • 車庫の賃貸借契約書写し(購入の場合は登記事項証明書原本)
  • 運行管理者の資格者証写し
  • 運行管理補助者の資格者証写し
  • 整備管理者の資格者証写し
  • 運転手の運転免許証写し

少し多いですが頑張ってこちらの書類を揃えます。

運輸局に対して申請をする

必要となる書類を揃えたら、いよいよ営業所新設の認可申請をします。
申請先は、新設する営業所がある都道府県を管轄する運輸支局です。

こちらの申請書の作成についても行政書士に依頼するのが、確実でなによりも早いです。
ご自身で行う場合は、運輸支局の窓口で申請書様式を受け取り、担当の方に記入の方法を聞いてから、記載していくのが良いと思います。

また各運輸支局のホームページにて、申請書の様式を公開している場合もあるので、ダウンロードしてパソコンで打ち込むのでも大丈夫です。

営業できる準備を整える

実際に認可となるまでは、申請から2~3ヶ月かかります。
その間に、認可後すぐに営業を開始できるよう準備を進めておきます。

建物を新しく建築する場合はこの間に建築したり、車庫の整地や囲いを行う等の準備です。
既に建物が建っている場所を契約している場合は、営業活動ができる事務机や備品、営業機器等の搬入を行います。

これらの準備が完了したら、あとは認可となるのを待つだけです。

認可取得

申請内容に問題なければ申請した運輸支局の担当者から認可取得の連絡が入ります。
この連絡をもって、無事営業所新設の認可取得です。

ここからの流れとしては、まず運輸支局に認可書を取りにいき、そのついでに運行管理者と整備管理者の選任を行います。

各管理者の選任は、選任届という書類に氏名等の情報を記載し、資格者証のコピーを添付して、運輸支局の保安課に提出することで完了します。

この選任届の提出が完了すると、「事業用自動車等連絡書」という書類が入手できます。

「事業用自動車等連絡書」は、新設する営業所に配置する事業用自動車の車検証やナンバープレートの情報を変更するために必要となる書類で、この書類を使って車検証やナンバーを変更します。

この車検証やナンバープレートの変更をもって営業を開始することができます。
これで、運送業の営業所新設の一連の流れは完了です。

まとめ

今回は、運送業の営業所を新設する際の手続きについて解説しました。

もっと具体的に手続きについて相談したい」「営業所新設の手続きを丸投げしたい」「候補地の調査だけお願いしたい」という方は、筆者が運営しているホームページ「愛知の運送業許可ステーション」からお気軽にご相談ください。

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