運送業の許可取得の手続きは、許可を取ってからもまだ続きます。
実は運送会社の社長様の中には、許可を取得したらすぐに運送業が始められると思っている方が結構多いんです。
この記事では、運送業専門の行政書士が許可取得から運輸開始までの流れを徹底解説します。
最後まで読むことで、許可取得後の手続きが分かるだけでなく、許可取得から営業開始までの最短ルートが分かります。
許可証の交付
申請書を提出してから4~5ヶ月経つと、運輸支局の担当者から連絡が入ります。
「○○運輸さん、×月×日付けで許可取得です。△月△日に許可証の交付と運行管理についての説明を行いますので、社長様か運行管理者様に出席をお願いします。」
この連絡があれば、晴れて運送業の許可を取得できたことになります。
指定された日時に許可証を受け取り、1時間程度今後の流れや営業においての注意事項説明があります。
この許可証の受け取りと今後の説明を地域によっては「許可交付式」と言ったりします。
そして中部地方では「許可交付式」は、許可を取得した会社の社長か運行管理者の出席を求める傾向にあります。
運行管理者・整備管理者の選任
運送業の許可取得には、運行管理者と整備管理者がそれぞれ1人ずつ必要でしたね。
許可を取得した後、ここで正式にそれぞれの管理者を選任します。
運行管理者・整備管理者選任届という書類に氏名や選任日などを記載し、それぞれの資格を証明する書類を付けて、運輸支局の保安課に提出します。
この書類は地域によっては、許可取得日の当日に提出できる場合もあります。
どういう事かというと、先程説明した許可交付式は許可取得の連絡を受けてから1週間後だったりします。
つまり、許可の連絡を受けて1週間待つことなく、運行管理者・整備管理者選任届の提出はできるという事です。
選任届を早めに出すことで、営業開始までの期間を短縮することができるので、早く営業開始したいという方はぜひ憶えておいていてください。
なお、許可申請時に既に選任予定の運行管理者・整備管理者の資格者証を提出しているかと思いますが、この選任届では別の方を選任することも可能です。
社会保険への加入・36協定等の締結
運送業を開始するうえで、会社やその従業員が社会保険等の保険に加入してることや、適切な届出を提出している必要があります。
そもそもこれらの手続きを踏まないと、事業用のナンバーに変更できない仕組みとなっているのです。
これらについては確実に行う必要があるため、それぞれの手続きについて概要を解説します。
労働保険保険関係成立届の提出
会社で労働者を1人でも雇用する場合は、労働保険の適用事業となり、被保険者となる労働者を雇用した日の翌日から10日以内に、事業所を管轄する労働基準監督署に「労働保険保険関係成立届」提出する必要があります。
ちなみに被保険者となる労働者とは、次のような条件を満たす方をいいます。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
雇用保険適用事業所設置届の提出
労働者を雇用する事業は、農林水産業の一部を除き雇用保険の適用事業所となります。
そのため被保険者となる労働者を雇用した日の翌日から10日以内に、事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険適用事業所設置届」を提出する必要があります。
この時、先程説明した「労働保険関係成立届」の控えが必要となりますので先に提出しておく必要があります。
詳しくは厚生労働省のホームページにて説明されています。
雇用保険被保険者資格取得届の提出
こちらも、被保険者となる労働者を雇用した日の翌日から10日以内に、事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。
「雇用保険適用事業所設置届」は会社に関する届出、「雇用保険被保険者資格取得届」は従業員個人に関する届出というイメージです。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届の提出
常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所は、健康保険・厚生年金保険に適用されることになります。
本来は会社設立から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出する必要があるのですが、まだ提出していない場合はなるべく早めに「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。
提出方法等詳しい手続きは、日本年金機構のホームページにて確認することができます。
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届の提出
健康保険・厚生年金保険の適用事業所にて雇用される方は、すべて被保険者となります。
被保険者となる労働者を雇用した日の翌日から5日以内に、事務センターまたは管轄の年金事務所に「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
提出方法等詳しい手続きは、日本年金機構のホームページにて確認することができます。
なお、パートやアルバイトであっても次のすべてを満たす場合は、加入義務が発生し被保険者となります。
- 学生ではないこと
- 2か月以上の雇用見込みがあること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 月の給与が88,000円以上であること
36協定の提出
36協定とは、時間外労働(残業や休日出勤)について事業主と労働者の間で定める協定をいいます。
所定外労働時間が発生する場合に、管轄の労働基準監督署に提出します。
運送業においては、残業や休日出勤が全く発生しないという事は考えにくいため、基本的に提出する必要があります。
就業規則の届出
就業規則とは労働者の賃金や労働時間などの労働条件について定めた規則集をいいます。
パート・アルバイト含め、常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則を管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
運行管理者や運転手など合わせて10人に満たない場合は、法律上提出の義務はありません。
賃金規定の届出
賃金規定とは、就業規則の中で定める労働者の賃金の計算方法や支払日等の規定の事をいいます。
就業規則同様、常時10人以上の労働者を使用する事業所が賃金規定を定めた場合は、管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
運輸開始前確認
ここでは、運送業を開始するにあたって「どの車両を使用するか」「どの人を運転手にするか」等の最終確認を行います。
「運輸開始前の確認について」という申請書に、車両や運転手の情報、社会保険の加入状況等を記載し、運輸支局に提出します。
この申請書には、運行管理者・整備管理者選任届の控えや、年金事務所や労働基準監督署に提出した社会保険書類の控えを添付する必要があります。
書類が受理されると「事業用自動車等連絡書」という書類を受け取ることができます。
ナンバープレートの変更
運輸開始前確認提出後に受け取った「事業用自動車等連絡書」を使って、車両のナンバープレートを取得します。
ここでやっと事業用である緑ナンバーを車両につけることができるわけです。
事業用のナンバープレートに変更したら、自動車任意保険も事業用に切り替える必要があります。
保険会社に変更後の車検証コピーを送って、切り替えの申し込みをしましょう。
営業開始のための社内準備
事業用ナンバーに変更したら、営業開始に向けての最終準備を行います。
実際に営業するまでに行わなければならない準備は下記のとおりです。
従業員に関する準備
- 適性診断の受診
- 健康診断の受診
- 初任運転者研修の受講
- 運転記録証明書の取り寄せ
車両に関する準備
- 自動車任意保険の切り替え
- デジタコの導入
- 会社名等の車体表示
- ガソリンカードの準備
- ETCカードの準備の準備
営業所に関する準備
- 表札の記載
- 運送約款の掲示
- 運賃料金表の掲示
- 帳票類(運転者台帳、点呼記録簿、運転日報、日常点検表、運行管理規程、整備管理規程等)の準備
- アルコールチェッカーの準備
- 運行管理システムの配備
準備にはかなりの量があることが分かります。
しかし、この時期にしかできないというわけではなく、もっと事前に行う事ができるものもたくさんあります。
許可が出たらすぐに営業開始したいという場合は、申請~許可までの4.5か月の間に済ませられるものは済ませてしまいましょう。
運輸開始届・運賃料金設定届の提出
準備がすべて完了し、緑ナンバーでの営業を開始したら「運輸開始届」という書類を運輸支局に提出します。
この申請書は、営業開始後30日以内に提出する書類で、「車検証の写し」と「自動車任意保険証券の写し」を添付します。
また、同時に「運賃料金設定届」という書類も提出する必要があります。
この申請書は、運賃の計算方法や適用方法について定めた運賃料金表を添付して提出します。
この2つの申請書を提出し、受理されたら一連の運送業許可取得に関する手続きがすべて完了します。
まとめ
今回は、運送業の許可取得から実際に営業を開始するまでの手続きについて解説しました。
「もっと具体的に手続きについて相談したい」「許可までは自分で取得できたが、営業開始するまでの手続きについてお願いしたい」という方は、筆者が運営しているホームページ「愛知の運送業許可ステーション」からお気軽にご相談ください。
運送業専門の行政書士が誠心誠意対応いたします。