これを読めばわかる!市街化調整区域に運送業の営業所を設ける方法!

運送業の営業所を車庫の敷地内に設置したいが、「市街化調整区域なのでできない」と言われ、諦めた経験はございませんか?

そう、ご存じの方も多いと思いますが、基本的に運送業の営業所は市街化調整区域には設置できません。

しかしまだ諦めないでください、例外として設置が可能な場合も存在します。
今回は、例外として市街化調整区域に運送業の営業所を設置できる方法を解説します。

具体的な方法

始めにお伝えしておきます。
市街化調整区域に営業所を設けられるパターンは以下の2つです。

① 都市計画法34条に基づいた開発許可を得る
② 営業所をトレーラーハウスとする

それでは、一つずつ解説していきます。

都市計画法34条に基づいた開発許可を得る

条文にはこのように記載されています。

市街化調整区域に係る開発行為については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。

一~十三(省略)
  十四 前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における   市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為

都市計画法 第三十四条より抜粋

要約すると、市街化調整区域での開発や建築は、限られた目的でしか認められませんと言っています。
そしてその限られた目的が、14つ書かれているのですが、1~13は関係ないので省略します。

運送業の営業所として、関係あるのは14号の「都道府県知事が開発審査会の議を経て・・・」というやつです。

これは何かというと、都道府県が認めた場合も、開発や建築ができる場合があるといっています。

それでは愛知県が認めている項目を下記に列挙します。

1号 分家住宅愛知県開発審査会基準
2号 沿道サービス施設のドライブイン(削除)
3号 土地収用対象事業により移転するもの
4号 事業所の社宅及び寄宿舎
5号 大学等の学生下宿等
6号 社寺仏閣及び納骨堂
7号 既存集落内のやむを得ない自己用住宅
8号 市街化調整区域にある既存工場のやむを得ない拡張
9号 幹線道路の沿道等における流通業務施設
10号 有料老人ホーム
11号 地域振興のための工場等
12号 大規模な既存集落における小規模な工場等
13号 介護老人保健施設
14号 既存の土地利用を適正に行うための管理施設の設置 
15号 既存住宅の増築等のためのやむを得ない敷地拡大
16号 相当期間適正に利用された住宅等の用途変更
17号 既存の宅地における開発行為又は建築行為等 
18号 社会福祉施設
19号 相当期間適正に利用された工場のやむを得ない用途変更
20号 1ヘクタール未満の運動・レジャー施設の併設建築物
21号 農家レストラン

愛知県開発審査会基準(法第34条第14号)より抜粋

この中で、運送業の営業所として認められる可能性があるのが、9号と17号です。
それでは、一つずつ条件を確認していきましょう。

9号 幹線道路の沿道等における流通業務施設

こちらは大規模な物流施設を設けることを前提としているので、所有する車両台数発着貨物量条件があるため、当てはまる営業所は限られます。

 幹線道路の沿道等における流通業務施設の立地について知事が指定する区域(以下「指定区
域」という。)内における流通業務施設のための開発行為又は建築行為で、貨物自動車運送事業
法第2条第2項に規定する一般貨物自動車運送事業の用に供される施設又は倉庫業法第2条第
2項に規定する倉庫業の用に供する同条第1項に規定する倉庫の内、自己の業務用のもので、
申請の内容が1項又は2項に該当し、かつ3項から6項までに該当するものとする。

1 流通業務施設で、次の各号に該当するものであること。
(1) 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律第5条第2項に規定する認定総合効
率化計画に記載された同法第2条第3号に規定する特定流通業務施設で、同法第4条第1
項による認定を受けたものであること。
(2) 申請地は、指定区域の記1、記2又は記3のいずれかに該当するものであること。この
場合において、記2の適用については、申請地からインターチェンジに至るまでの主要な
道路(以下「主要な道路」という。)が、幅員6メートル以上であること。また、記3の
適用については、主要な道路が、幅員9メートル以上であること。

2 1項以外の流通業務施設で、次の各号に該当するものであること
(1) 積載重量5トン以上の大型自動車が8台以上配置され又は一日当たりの発着貨物が80
トン以上ある施設であること。
(2) 申請地は、指定区域の記1、記2又は記4のいずれかに該当するものであること。この
場合において、記2又は記4の適用については、主要な道路が、幅員6メートル以上であ
ること。

3 申請地の規模はその事業計画に照らし適正なものであること。
4 周辺の土地利用上支障がなく、周辺の環境条件に悪影響を及ぼさないものであること。
5 所在市町村長の支障がない旨の副申書が添付されていること。
6 開発又は建築を行うために他法令による許認可等が必要な場合は、その許認可等が受けら
れるものであること。

愛知県開発審査会基準 第9号「幹線道路の沿道等における流通業務施設」

細かい部分は省略しておおざっぱに言うと、次の1か2に該当すれば、許可がとれる可能性があるといっています。

  1.  物流総合効率化法(通称:物効法)の認定を受けていて、かつその土地が四車線以上の国道等か高速道路のインターチェンジから近く、一定の道幅がある事
  2.  5t車8台以上、もしくは一日の発着貨物が80t以上で、かつその土地が四車線以上の国道等か高速道路のインターチェンジから近く、一定の道幅がある事

お判りいただけると思いますが、かなり条件が厳しいです。
最初に当てはまる営業所が限られるといったのは、こういう事です。

17号 既存の宅地における開発行為又は建築行為等 

こちらは、その土地が条件に合致すれば認められる可能性が十分にあります。
具体的な条文は次の通りです。

 市街化調整区域に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更してその区域が拡張
された際すでに宅地
であった土地で現在まで継続して宅地であるもののうち、おおむね50戸以
上の建築物が連たんしている土地における開発行為又は建築行為若しくは用途変更で、申請の
内容が次の各項に該当するものとする。

1 予定建築物の用途は次の各号の一に掲げるもので、居住の用又は自己の業務の用に供する
ものであること。
(1) 住宅、店舗等で建築基準法別表第2(い)項、(ろ)項又は(は)項に掲げるもの。ただ
し、床面積については適用しない。
(2) 事務所、倉庫又は工場(作業場を含む。以下、同じ。)。ただし、建築基準法別表第2(る)
項、(を)項(第5号及び第6号を除く。)又は(わ)項(第1号から第6号までを除く。)
に掲げるものを除く。

2 予定建築物の用途は次の各号に掲げる用途に供しないものであること。
(1) 倉庫にあっては、建築基準法別表第2(と)項の準住居地域内において建築してはなら
ない規模以上の危険物の貯蔵等をするもの
(2) 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に規定する風俗営業及び性風俗
関連特殊営業等

3 工場にあっては、周辺の土地利用上支障がなく、周辺の環境条件に悪影響を及ぼさないも
のであり、所在市町村長の支障がない旨の副申書が添付されているものであること。

4 申請地の規模は、居住の用に供するものにあっては5ヘクタール未満とし、第1項第1号
に該当するもの(居住の用に供するものは除く。)については1,000平方メートル以下、同項
第2号に該当するものは500平方メートル以下であること。

5 建築物の高さは、原則として10メートル以下であること。

6 住宅の開発行為及び建築行為で、一戸建ての住宅の一画地の最低敷地面積は原則として160
平方メートル以上であること。ただし、土地利用上やむを得ない場合で、複数の区画がある
場合は、全体区画の数に0.2を乗じて得た数(平成20年3月24日以降分筆等による分割が
なされていないものについて、その数が1に満たない場合は1とする)を超えない数の区画
について140平方メートル以上とすることができる。

7 居住の用に供する建築物(一戸建ての住宅を除く。)にあっては、駐車場がその敷地内に適
切に設けられていること。

8 開発又は建築若しくは用途変更を行うために他法令による許認可等が必要な場合は、その
許認可等が受けられるものであること。

愛知県開発審査会基準 17号 既存の宅地における開発行為又は建築行為等

こちらもおおざっぱに要約すると、線引き前から現在まで宅地であって、建物が密集している土地は許可が取れる可能性があると言っています。

なお、「線引き前」とは何かというと、都市計画法の市街化区域と市街化調整区域の区分が生まれた時点より前という事です。

そしてこの区分が生まれた時点は地域によってバラバラであり、愛知県の場合は一部の地域を除いて「昭和45年11月24日」となります。

なので、「昭和45年11月24日から現在まで宅地であって、建物が密集している土地」と言い換えることができます。

なお、9号の大規模物流施設に関してもそうですが、「当てはまっているかも?」と思った場合は必ず事前に役所に相談して確認をします。

よくよく確認してみたら、細かい条件がクリアできていなかったという事もあり得ますので、くれぐれも先に土地の契約をしてしまわないよう、注意しましょう。

営業所をトレーラーハウスとする

さて、ここまで長くなりましたが、もう一つの方法が「営業所をトレーラーハウスとする」です。

この方法は、先ほどの開発許可のよう建物の規模や土地の立地に一定の条件が付くものではありません。
そういう意味では、開発許可よりもハードルは低くなります。

なぜ、トレーラーハウスであれば市街化調整区域に設置できるのかというと、市街化調整区域が制限しているのは建物の建築であって、トレーラーハウスは設置方法によっては建物ではないからです。

そしてこの、「設置方法によっては」という部分が重要です。

裏を返せば、設置方法によってはトレーラーハウスは建物にもなり得るという事です。

ではどのような設置方法であれば、建物にならないのかというと、地域によって異なります。
例として、中部地方で多く見られる判断基準を下記に列挙します。

①車輪が取り外されていないこと。また車輪が走行可能な状態に保守されていること。
②車輪以外のもので地盤上に支持されている場合、その支持構造体が工具なしで取り外しができること。
③トレーラーハウスの進行方向に固定された障害物がないこと。
④トレーラーハウスの設置場所から公道へ至る通路が確保されていること。
⑤階段・デッキが独立した構造体でありトレーラーハウスの移動に支障がないこと。
⑥トレーラーハウスが複数台設置されている場合、それらが連結されていないこと。
⑦給水管の接続方法が工具を使用せず着脱出来る方式であること。
⑧排水管の接続方法が工具を使用せず着脱出来る方式であること。
⑨電気配線の接続方法が工具を使用せず着脱出来る方式であること。
⑩ガスボンベがトレーラーハウスに積載されているかまたはレンチで簡易に着脱できること。
⑪通信回線の接続方法が工具を使用せずに着脱出来る方式であること。
⑫エアコン等の室外機がトレーラーハウスに積載されていること。
⑬適法に公道を移動できることを証明する公的な書類があること。

日本トレーラーハウス協会設置検査基準より抜粋

これは記載の通り、日本トレーラーハウス協会の設置基準であり、また役所もこの設置基準をもとに建物に「なる」「ならない」の判断をしているようです。

ただし、この判断も今後変わる可能性も十分にありますし、地域によってもかなり差が出る部分です。
設置前には必ず、役所への事前相談を忘れないようにしましょう。

そしてこの建物に「なる」「ならない」の判断・交渉は専門家に任せたほうが良いです。
トレーラーハウスの設置については細かい部分を突っ込まれることが多く、さらに役所としても処理方法が確立していないこともあるからです。

この判断を誤ると、大きな損失となりますので、慎重に協議するようにしましょう。

そして、役所の判断でトレーラーハウスは建物に該当せず、運輸局としてもトレーラーハウスは営業所として問題ないという見解であれば、営業所としての認可を得ることができます。

そうすれば、市街化調整区域内の車庫に、運送業の営業所を設けることが可能となり、運送効率の上昇や経費削減が狙えます。

まとめ

今回は、市街化調整区域に運送業の営業所を設ける方法を2パターン紹介いたしました。
開発許可については、その土地によって条件に当てはまらない場合は、どうしようもない場合があります。

しかし、トレーラーハウスについては、土地の条件ではなく、設置の方法に気を付けることによって、認可を得られる場合があることが分かりました。

そしてトレーラーハウスを営業所とする申請はその分野に精通した専門家に任せるのが確実です。
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