利用運送を始めたいけれど、「個人事業主として始められるのか」「法人にしなくていいのだろうか」と悩んでいませんか?
利用運送に限らず、事業を始める際は誰でも個人で始めるか法人で始めるか悩むものです。
個人か法人かという問題は、初めによく考えないと、許可を取ってから「やっぱり法人の方が良かった」となると面倒な手続きが増えてしまいます。
今回は運送業専門の行政書士が、初めに失敗しないため、利用運送事業を個人で始めようとする方に向けて徹底解説します。
利用運送事業は個人で行うことができる
利用運送事業は個人で許可を得る(登録する)ことができます。
そして登録自体の難易度は、個人と法人で大きく変わるようなものではありません。
個人で始めて後から法人に移すことができる
利用運送事業は最初は個人で始めて、その後法人を設立した際に許可をその法人に引き継ぐ事も可能です。
「地位の承継届出書」を管轄の運輸支局に提出することで、そのようなことが可能となるのです。
なので、どうしても最初に個人か法人か決められないという場合は、引き継ぐ際にひと手間かかりますが、まずは個人で始めてみるというのもアリです。
利用運送事業は個人で始める方の割合
利用運送事業は個人で始める方の割合はどちらかというと少数派です。
国土交通省が出している中部圏内での登録事業者のデータによると、直近年度(令和5年4月~令和6年3月)での利用運送事業のと登録をした割合は法人が86社、個人が8名となっております。
個人で登録する方は全体の約9%という事になります。
このデータを見る限り、利用運送事業を個人で始める方というのは圧倒的に少数派だという事が分かります。
ではその理由は一体何でしょう。
次に説明する、個人で始めるメリットデメリットから紐解くことができます。
個人で開業するメリットデメリット
利用運送事業を個人で始める際のメリットとデメリットを解説します。
個人で始めるメリット
開業のための費用が安くなる
法人で始める場合は、当たり前ですが法人を設立するという工程があるので、その設立の費用がかかります。
通常、法人の設立は行政書士などの専門家に頼むのが一般的なので、報酬と税金等の法定費用を合わせて30万円前後は必要となります。
また設立時だけでなく、法人の場合は必ずかかる法人税や定期的な役員の重任登記などランニングコストがかかります。
一方個人で開始する場合は、法人に関する必要がかからないので、その分開業費用やランニングコストが安く済みます。
事業を開始するまでの期間が短い
これも当たり前と言えば当たり前なのですが、法人を設立する際は、その分時間がかかります。
設立する時期等にもよりますが、一般的には1ヶ月以上かかると思っておいた方が良いです。
厳密に言うと法人の設立前であっても申請自体は可能なのですが、それでも定款の認証は終えている必要があるため
個人で申請する場合に比べて時間がかかるのは確実です。
個人の場合は、設立を待たずに申請することが可能であるため、申請までの時間を短縮することができます。
個人で始めるデメリット
節税対策がしづらい
利用運送事業を始める場合、たとえば運送会社で配車マンをやっていて、ある程度売り上げの目途があるという方が多いと思います。
そのため、比較的初年度からしっかり売り上げが立つという方もいらっしゃるかと思います。
つまり事業を立ち上げて早々に、「法人化したほうが節税になる売り上げのボーダーラインを超える」ということも珍しくありません。
そうなると、個人事業主として支払う所得税より法人税の方が利率が低いため節税になります。
社会的な信用が低くなる
個人事業主やフリーランスが浸透してきたとはいえ、法人と比べてまだまだ社会的な信用が低く見られがちです。
運送会社から「会社の規定で法人としか利用運送契約を結べない」と言われてしまったという事例もあります。
また金融機関から融資の受けやすさも、圧倒的に法人の方が有利になります。
そのため今後事業を広げるために、銀行からの融資を考えているという方は、最初から法人で登録しておいた方が良いと言えます。
メリットデメリットまとめ
こうしてメリットとデメリットをまとめてみると、個人で始める場合のメリットは事業を開始する際の恩恵であるのに対し、デメリットは事業を継続する以上常に発生することが分かります。
利用運送事業を法人で始める方が圧倒的に多いのは、最初に発生するデメリットより、事業継続に際するメリットの方が大きいと感じるからであると考えられます。
利用運送登録までの流れ
最後に利用運送登録までの流れを解説します。
個人で申請するにしても、法人で申請するにしても流れは同じなので参考にしてみてください。
以下の流れで手続きを進めていきます。
1. 事務所の用意
2. 利用運送契約の締結
3. 必要書類の収集
4. 申請書類の作成・提出
5. 登録通知書の交付等
6. 事業開始
ステップ1 事務所を用意する
利用運送の登録には、必ず事務所が必要となります。
事務所については、具体的な広さや設備の規定があるわけではないので、営業活動ができれば自宅の一室でも問題ありません。
ただし、一つ注意することがあります。
それは事務所を設けられる場所というのは法律で明確に決まっています。
事務所を設けられない場所を登録しようとすると、申請しても登録とならずハネられるので、事前に市役所等で事務所使用できる場所であるか確認する必要があります。
ステップ2 利用運送の契約を結ぶ
利用運送の登録には既に運送会社と契約した「利用運送契約書」が必要となります。
まだ利用運送の登録が完了していないのに契約を結ぶのは変な感じがしますが、そういうものです。
そのため、あらかじめ荷物を運んでくれる運送会社に交渉して、契約書にハンコを押してもらうようお願いしましょう。
ステップ3 必要書類を集める
利用運送の契約が済んだら、その契約書を始めとする申請に必要な書類を集める必要があります。
具体的には申請する方の戸籍抄本(法人で申請する場合は履歴事項全部証明書)や申請する方の履歴書(法人で申請する場合は役員の履歴書)などです。
また、利用運送の登録を受ける場合は、預金や不動産、有価証券等の資産が300万円以上(法人の場合は貸借対照表上の純資産300万円以上)あることが必要であるため、財産の内容・金額を記載した調書(法人で申請する場合は貸借対照表)を作ります。
ステップ4 申請書類の作成・提出
申請者の情報や事務所の所在地等の事業計画を記載した申請書を作成します。
さらに集めた必要書類を添付して、事務所を管轄する運輸支局に提出します。
ステップ5 登録通知書の交付
申請後、内容に問題なければ2~3か月で利用運送の登録が完了します。
完了すると「登録通知書」という許可証が発行され、その際に登録免許税を納付します。
「登録通知書」が発行されれば晴れて利用運送の事業を開始することができます。
まとめ
今回は利用運送事業について、個人事業主として開業する方に向けて解説いたしました。
「もっと具体的に手続きについて相談したい」「個人と法人どちらで申請するか迷っているので相談したい」という方は、下記の「愛知の運送業許可ステーション」をクリックしホームページからお気軽にご相談ください。
利用運送の事務所の調査や利用運送契約の締結も含めて、運送業専門の行政書士が誠心誠意対応いたします。
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