利用運送事業を行うための届出とはどのようなものか専門の行政書士が解説します!

利用運送を始めたいけれど、「届出や許可はいるのだろうか」「具体的にどのようにはじめればよいのだろうか」と悩んでいませんか?

利用運送に限らず、新しく事業を始める際は最初の手続きや流れが良く分からず、躓いてしまいます。

今回は運送業専門の行政書士が、初めに失敗しないため、新たに利用運送事業を始めようとする方に向けて徹底解説します。

利用運送とは

利用運送とは、自ら貨物を運搬する手段を持たず、運送の手配を行う事業のことをいいます。

一般的な運送会社は、荷主と運送委託契約書という荷物を運ぶための契約を結びます。
そして自社のトラックで荷物を目的地まで運び、荷主から運賃として料金を貰うという流れです。

利用運送事業は、荷主から依頼を受け契約を結ぶまでは一緒なのですが、その後自社のトラックを使わず、運搬業務を別の運送会社に委託します。

その別の運送会社とも運送委託契約を結び、荷主から受け取った運賃と運送会社に支払う運賃差額を利益として得る仕組みです。

利用運送の種類

貨物利用運送事業には、「第一種貨物利用運送」と「第二種貨物利用運送」の2種類があります。

第二種貨物利用運送事業とは、まずはトラック荷物を集荷し、一つにまとめた荷物を船舶・飛行機・列車などの使って配送先付近の港・空港・駅に運び、そこから配達先へのトラック輸送までを一貫して手配します。

とにかく、「特定の荷物を依頼主の手元から消費者の手元まで、一貫して運搬することを手配する」というのが第二種貨物利用運送事業です。

第二種貨物利用運送事業の構造

それ以外の利用運送業務はすべて第一種貨物利用運送事業となります。

第一種貨物利用運送事業の構造

ここでは第一種貨物利用運送のトラック輸送を前提に解説します。

利用運送を始めるためには

第一種貨物利用運送を行うためには、国に届出(申請)をし利用運送事業者として「登録」を受ける必要があります。
この届出(申請)は、利用運送を行う事業計画を記載したり、申請者の情報や運送会社との契約書など様々な書類を添付して行います。

申請先は利用運送の営業所を管轄する運輸支局であり、2~3か月間の審査期間を経て登録となります。
利用運送事業者として「登録」を受けるためには、クリアしなければならない条件(一般的に「要件」といいます。)があります。

次の章ではこの要件について、一つずつ解説します。

利用運送を登録するための要件

利用運送事業者としての登録を受けるための要件は、大きく分けて3つあります。

申請者が欠格事由に該当していないこと

一つ目の要件は、申請する会社の役員(個人で申請する場合はその個人)が、欠格事由という項目に該当していない事が必要です。

下記に欠格事由を載せておきますが、大まかに言うと刑法上の罪に問われた事があったり、運送業務についてペナルティを受けたり、不正行為をした者は登録をさせないという趣旨になります。

一年以上の懲役又は禁錮この刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者

第一種貨物利用運送事業の登録又は第二種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者

申請前二年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした者

貨物利用運送事業法 第六条第一項より抜粋

この要件は単に該当するか該当しないかの判断だけなので、確認して該当者がいなければクリアです。

事業を行うための営業所があること

二つ目の要件は、利用運送を行うための営業所があることです。
営業所と言っても、新たに建物を建てろというのではなく、自宅の一室などでも問題ありません。

また、この営業所は法人の本店所在地と同じである必要もありません。

ただ一つ注意点があり、営業所として使用できない地域というのが実は法律で決まっています。(一般的に「用途地域の制限」といいます。)

利用運送の営業所としようとする場所が用途地域上、営業所使用ができる場所であるかどうかというのは事前に調査しておかなければなりません。

用途地域およびその用途地域に営業所を設けることができるかどうかは、基本的にその住所を管轄する市役所の都市計画課等の部署に問い合わせることで調査することができます。

事業を行うための資金があること

最後の要件は、利用運送を行う上で十分な資金があることです。
具体的には、直近の貸借対照表上の純資産額が300万円以上である必要があります。

法人を設立して1期立っていない場合は、設立時の資本金が300万円以上であれば大丈夫という事になります。

もし、純資産額が300万円を下回る場合は、増資という資本金を増やす手続きを行うことで、増加する資本金の金額に応じて純資産額を増やすことができます。

または、次の事業年度においては純資産額が300万円以上となることが確定している場合は、それまで待つという手もあります。

利用運送登録までの流れ

貨物利用運送の登録するための要件が分かったところで、実際に利用運送を始めるための手順を解説します。

法人の設立をする

国土交通省が発表している令和5年度の利用運送の登録をした事業者は、法人が86社、個人が8名でした。(中部エリア)
割合にすると、約91%が法人で登録しております。

つまり、利用運送事業を行う場合は圧倒的に法人でスタートする方が多いという事です。
法人を設立する場合は、利用運送事業の登録とは別に、法務局に法人の設立登記を申請する必要があります。

営業所を確保する

利用運送登録の要件でも解説した通り、営業所を確保する必要があります。
営業所は利用運送登録の申請をする際に、その所在地を申告する必要があるので、申請前に場所を決めておく必要があります。

営業所の確保は法人の設立と同時並行で行っても良いのですが、新たに契約する場合は法人名義で契約する必要がありますので、契約自体は法人が設立出来てからとなります。

運送会社と契約を結ぶ

利用運送登録の申請をする際に、最低1社以上と契約した利用運送契約書を提出する必要があります。

利用運送契約というのは、実際に荷物を運んでもらう運送会社と結ぶ契約で、契約期間や料金の支払いなど一般的な項目を定めます。

まだ利用運送の登録が完了していないのに、この契約を結ぶのは変な感じがするかもしれませんが、登録するうえで必ず必要な書類となります。

こちらも法人の設立や営業所の確保と同時並行で進めますが、法人の設立が完了しないと契約自体はできないのは、営業所の賃貸契約と同じです。

必要書類を集める

一つ上で説明した利用運送契約書もその一部ですが、利用運送登録の申請には様々な書類を用意する必要があります。
例えば法人の登記簿謄本や定款、役員の履歴書等が挙げられます。

必要書類の収集も一気に行うのではなく、出来るときに少しずつ集めておくとスムーズに手続きが進みます。

運輸局へ申請する

必要書類の収集が終わったら、申請書を作成して営業所がある都道府県を管轄する運輸支局に申請します。
利用運送登録の申請書には、申請者の情報や事業の範囲等などの事業計画を記載します。

申請が完了したら、登録完了の通知があるまでしばらく待ちます。
内容に問題が無ければ、申請してからおよそ2~3ヶ月程度で登録が完了します。

許可証を受け取る

登録が完了したら、申請書を提出した運輸支局にて登録通知書(許可証)を受け取ります。
利用運送の登録には9万円の登録免許税という税金を納める必要があり、その納付書も一緒に渡されます。

納付期限は1か月以内のため、それまでに郵便局または金融機関で登録免許税を納めます。
そして、登録通知書が交付された日から、利用運送の事業を行うことができます。

運賃料金設定届を提出する

利用運送を開始したら、請求する運賃の計算方法を示した運賃料金表を運輸局に届出る必要があります。
この運賃料金届をしないと、罰則の対象となるため忘れないようにしましょう。

この届出をもって、利用運送登録の手続きはいったんすべて終了します。

まとめ

今回は利用運送事業について、個人事業主として開業する方に向けて解説いたしました。

もっと具体的に手続きについて相談したい」「利用運送を始めたいが何から始めてよいか分からない」という方は、筆者が運営しているホームページ「愛知の運送業許可ステーション」からお気軽にご相談ください。

利用運送の事務所の調査利用運送契約の締結も含めて、運送業専門の行政書士が誠心誠意対応いたします。